2013年9月22日日曜日

平原綾香 "Jupiter" 10th Anniversary 2013 @ 鳥取 梨花ホール

 希有な声を持ち、デビュー曲"Jupiter"で一躍脚光を浴びた平原。音楽一家に生まれ、洗足学園音楽大学を卒業した歌手は、鳥取の聴衆をまえにどんなコンサートを開くのだろう。なにせ"Jupiter"のイメージが強い。どうしても、クラッシックの音楽会や、NHKぽさが付き纏う。

 10周年ツアーの当日、秋晴れの鳥取砂丘で馬の背から海へ一気に駆け降りたという元気な平原。音楽だけでなく、高校までクラッシックバレエをやっていたり、バタフライが得意というだけあって意外に体力には自信があるようだ。

 "Jupiter"モチーフのオープニングのストリングスが鳴り厳かに幕が開く。正しく鍛えられた声帯と共鳴腔から響く平原の歌唱が会場を包む。MCもなめらかでわたしのステージには静と動があると云い、次第に動へ誘導する。

 ペンライトが揺れる"星つむぎの歌"でサビを一緒に歌わされると、歌いながらアイリッシュダンス(タップ)して、ボイパまで披露し、息が切れる様子もなく踊り続ける。果ては、自身が高二のときの文化祭でやった"Joyful,Joyful"(天使にラブソングを2)で、鳥取の聴衆になんと英語のcall and responseを求める強引さも見せる。 

 ♪You down with G-O-D? vs. yeah,you know me ... everybody!

 ロングドレスに着替え、レ・ミゼラブルでアン・ハサウェイが歌った"I dreamed a dream"を高らかに歌い上げる。ミュージカルではないので、アン・ハサウェイのような歌唱表現をするわけもないが、そのまえに平原は情感を歌に乗せないし乗せられない歌手なのかもしれない。歌そのものより、どうしても「技巧」を聴いてしまうのは、生身の彼女がそこにいないからだろう。
  10年間、ひとの心に届く歌唱になっているか、苦しんできたという平原。いまの平原では自身の生身の情感を歌に表現しきれない。彼女が「共感してほしい」と聴衆に願っても、その硬質な歌唱がその願いを妨げる。それは、平原が抒情詩ではなく叙事詩の語り部だからだ。

 だからこそ、平原は"Jupiter"のような荘厳な楽曲や、アンドレ・ギャニオンの"明日"のように静かに客観的に想いを伝える楽曲では比類ない独自の世界を築き、数多くのファンを魅了している。

 最後の楽曲はもちろん"Jupiter"。"Jupiter"は誰より自分を知っている楽曲で、曲というよりひとつの人格として自分を支えてきたかけがいのないものと云う。逆に云えば、この10年間、"Jupiter"を超えられないままの自分でいるということだろう。
 特色ある低音が印象的な平原だが、高音域でのミックスボイス、それに絡まるファルセットの共鳴は豊かで美しい。エンディングのロングトーンの重厚感と切れも圧倒的だ。

 最前列のファンクラブメンバが立ち上がると、後列もじわじわと続き、それが観客席全てに波及する。平原のパフォーマンスも見事だったが、スタンディングオベイションを鳥取で観ること自体に驚き、感激してしまった。延々と続く拍手。それに応えて、手を振り感謝の意を表す平原。その後、アンコールステージの半ばでグッズ紹介が10分以上続いたので、正直それまでの感激が半減してしまったのが残念f^^;

 序盤で歌った"Eternally"などは、平原の声の魅力を惹きだす数少ない楽曲だ。巧さは際立つが、その声を活かすオリジナル楽曲に恵まれないことも、平原の可能性を摘んでいる。

 来年はミュージカルに挑戦する平原。いつの日か叙事詩から抒情詩へ、生身の自分を表現する歌い方を身に付けたとき、また新たな平原の魅力が開花するのだろう。

2013年9月21日土曜日

倍音フレーバーを練りこんだリップグロス 西野カナ ~Love Collection pink&mint ~

最新アルバム2組 Love Collection  pink/mint 
西野カナのリップグロスには、倍音フレーバーが練りこめられている。

 デビュー5周年のベストアルバム"Love Collection ~pink&mint~"が好調な西野カナ。ファッション紙の表紙モデルになったり、全国のファッションビルに西野カナコーナーがつくられたりと、トレンド・リーダーとしても注目されている。
ファッションビルに展開された西野カナコーナー
アルバム"Love Place"を発表した、ここ1,2年で、西野カナの歌力は劇的な変化を見せている。発声からいえばミックスヴォイスを完全に体得できたこと。そして、それにより従来以上に倍音を生み出す共鳴腔を、作り上げたこと。

 まるでリップグロスに倍音フレーバーが練りこまれているかのように、西野カナの唇から発せられる共鳴は美しく響く。いまの西野カナのクオリティと比べれば、初期の楽曲は地声と裏声の切り分けのツートーンで単調にさえ聴こえてしまう。"私たち"、"たとえ どんなに…"などは、倍音フレーバーの散りばめ方に隙がなく完璧な仕上がりだ。

  楽曲提供者も、西野カナの声をよく知った作り方をしている。次のアルバムがいまから楽しみです^^

2013年9月16日月曜日

台風一過 水谷珈琲 ブレーメン商店街夕景 @ 元住吉

 台風一過の川崎。元住吉のブレーメン商店街はいつもの賑わい。台風が日本を襲った日に伊坂の「終末のフール」を読む。カフェラテは、やっぱり水谷珈琲。明るくて綺麗で美味しくて、落ち着きます^^
輝くエスプレッソマシン


ブレーメン商店街の夕景

白い礼拝堂がある阿佐谷東教会と幼稚園の木製すべり台


まんまるの牧師さんが園長してる幼稚園のすべり台も木製でええかんじでした^^

2013年9月14日土曜日

飯田さつき チャリティJazzライヴ2013 @ 阿佐谷東教会チャペル

 夏の終わりの午後の光が溢れる、真っ白な教会。その阿佐谷東教会の丸っこい神父さんから、さっちゃんとよばれる飯田さつきが俊英達を引き連れJAZZのチャリティーライヴ。
   オープニングは教会らしくアカペラでAmazing Grace。そして、小学生から90代という幅広い年齢の聴衆をまえに、二部構成の本格Jazz Liveが始まる。
 You'd Be So Nice To Come HomeToを皮切りに小気味よいJazzが教会に響きわたる。神は寛容だ。ゴスペルでなくとも、太陽光が溢れる明るい白い教会で、ベースがうねりをあげるのを受け入れてくれる。そう、もちろん、飯田さつきのソウルフルな「ぎらり」ヴォイスも。
  
  被災地に何度も足を運び、おもに調度品の補修作業や、「傾聴」のボランティアを行ってきた飯田。相手を受容し共感する能力が高い飯田の歌は、その歌詞が持つ情感を聴衆の胸に響かせる。

 低音のスパイスを惜しげもなく振りまいたあと、Love Lettersでは一転柔らかなハイトーンヴォイスを光に放つ。神の赦しを得た歌姫は、マライヤのHeroの熱唱で教会を震わせると、テンションの高いMoon Riverでは、ぐるぐる回る月の重力で地球を翻弄する。バンドメンバーも歌にもっていかれたかのように前のめりで、グルーヴは最高潮に達する。 

 When You Wish Upon A Starをパイプオルガンで聴けたのは教会ならでは。

 That a hero lies in you 
ライヴでも被災地でも、飯田が伝えていきたいのは、この言葉なのかもしれない。
 


2013年9月7日土曜日

ZONE secret base / Galileo Galilei @ あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

   札幌のガールズバンドZONEが「secret base ~君がくれたもの~」で一躍脚光を浴びたのが2001年。

♪きみと夏の終わり 将来の夢 大きな希望 忘れない
 10年後の8月 また逢えるのを信じて 最高の思い出を
http://www.youtube.com/watch?v=XaFPFzW4KcA

   そして、まさしく10年後、その世界観を具現化したアニメ「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の放映が始る。真夜中にも関わらず、回を重ねるにつれ高い視聴率をあげるようになった。「secret base ~君がくれたもの~」は劇中でも、迷い彷徨う少年少女の夏のドラマを盛り上げた。

めんまの死は、秘密基地に集まっていた超平和バスターズのそれぞれに影を落とす。バラバラになり思春期を迎えてもそれは晴れることはない。ところが、じんたんだけに見える幽霊となってめんまが突如現れてから、また秘密基地に集まってくる。葛藤をのりこえ、見えないめんまへそれぞれの伝えたい言葉を届ける。姿を現しためんまが消える直前に流れてくるsecret baseのイントロに胸が疼く。
http://www.anohana.jp/
 主題歌は、Galileo Galileiの「サークルゲーム」。ギター・ロックバンドテイストをひそませながら、軽やかに夏の風を歌い上げる。夏の終わりにお奨めです。

2013年8月25日日曜日

チキンラーメンとわたし 誕生日のドラムサークル 妹尾美穂 @珈琲美学

The water is wide, I cannot cross o'er,
その水辺は広く 向こう岸へ渡れない
・・・
 
 バースデイライヴは「The water is wide」ではじまった。水面がきらめき、さざめくさまを、美穂ピアノが映し出す。
 love's a jewel when it is new
 but love grows old and waxes cold
 And fades away like morning dew.
 愛の始まりは宝石のようだが、やがてくすんで冷えきって、朝つゆのように色あせてゆく
「The water is wide」に惚れ込んだ妹尾美穂が創り上げたのがいまや定番の名曲ki-ra-ri。ki-ra-riの水の流れは、大河でなく小川の軽快な印象だが、まさしく「流麗」な音の響きが妹尾美穂のピアノだ。

チキンラーメンと誕生日が同じ妹尾美穂は笑顔がよく似合う。「Evening Glow」では鍵盤ハーモニカとピアノの一人二役を披露。息吹の響きが心地よい。

 そして、第二部はドラムサークル。お客さんみんなが打楽器を手にし、思い思いにリズムを刻む。妹尾美穂のファシリテートで、会場が一体となり、歓声が湧き上がる。

この冬、セカンドアルバムの制作の取り組む妹尾美穂。新曲「Zephyr」が象徴するように、また新しい風が吹いてくる。