2009年12月20日日曜日

さらさ 風(ギター)と波(ハープ)クリスマスライヴ 1219

 さらさの音楽は風と波でできている。風が季節を運び、ハープの音色が波のように広がり聴衆を包み込む。9月のケーキカフェライヴの次はディナーコンサート。クリスマスディナーの会場は、さらさがいつも演奏している広島県立美術館内レストラン「マルコポール」。大理石の床がちょっとほかにない音響を生み出す。
 受付でmachiko先生と森川君がお出迎え(^^)machiko先生は黒いショールにドレスがおしゃれでさすがだけど、いつもラフでクールな森川君が急ごしらえな眼鏡とブレザーでなんだか浪人生ぽいf^^;(写真は演奏が終わったあと、ほっとしてるお二人)
 晴れやかな周囲のなか、クリスマスディナーなのにデコさんとおやじ二人でテーブルに着きました(:_;)
 玉城がいないときのmachiko先生はよくしゃべる。森川君もちょっとだけ頑張るf^^;クリスマスソングから始まったさらさのディナーコンサート。森川君のギターが冴える。5弦、6弦のベース音がクリアに響いて、ハープが広げる波紋を支える。2曲目に情熱大陸を持ってきて「イージーリスニングでない」さらさが始まる。コンテンポラリーも、オリジナルも進化してる。瞬時に煌めくギターのハーモニクス、力強く速い弾糸でテンションを高めるハープ。音楽がとても締まったかんじがする。東風~戦場のメリークリスマスの坂本教授楽曲は聴きごたえがあった。穏やかな海から、荒波のグリッサンドまでこなす完成度の高いさらさがここにいる。
 
 トークも進化しているf^^;今年の想い出で、来広したクリスタル・ケイとの共演や、マイケル・ジャクソンへのオマージュを語る。今秋に出したオリジナルCD「四季彩」に続き、春には第二弾を出す構想まで飛び出す。料理もおいしい。普段、食べられないフレンチコース。飲み放題でデコさんが手当たり次第飲んでいる。クリスタル・ケイって知ってる?と訊くと、知ってる知ってる、「あーあー、はてしないー」と大都会を歌い出したので慌てて口を抑える。

ジャクソンファイヴのI'll Be There. で思わず口ずさむ。さらさの音楽も「そこにいる」。さらさの次の課題は、machiko先生の歌かなあf^^;弾き語りして、みんなで歌いましょうと云ってくれたら盛り上がるなあ(^^)/

<フルコースメニュー>
 至福のアミューズ(ホタテ貝のポアレ・アンディーブのコンフィ添え)
 タラバ蟹とスモークサーモンの野菜畑
 牡蠣のクレームスープ
 スズキのポアレ・ラディッシュのグラッセ~赤ワイン酢ソース~
 ローストビーフ~西洋わさび・タップナードのムース仕立て~
 クリスマスデザート(フォンダンショコラと苺のムース)
 パン コーヒー
・Free Drink
 生ビール・酒・焼酎(芋・麦)・グラスワイン(赤・白)・梅酒・・・

デコさん、声おおきい・・酔っ払いすぎだよ(* *)

2009年12月12日土曜日

上原ひろみ 日本ツアー 広島廿日市 1211

 2003年にアルバム「Another Mind」で世界デビューし、いまも世界を飛び回る上原ひろみ。初めて味わう感触の音楽だったことをおぼろに覚えてる。広島は一年ぶり。先週はニューヨークにいたらしい。
 18:40 相変わらず人がいない廿日市市役所前電停。今日は平日。開演の19時までに入るために会社を定時ダッシュ。タクシーでは渋滞にいらつき、紙屋町西から乗った路面はぎゅうぎゅう詰め。満員の宮島口行きの電車に揺られ45分。みんなはどうやって辿り着いたのだろう。さくらぴあではすでに長蛇の列ができている。ジャズのファンはみんな年齢層が高い。たまに音楽専攻ぽい会話してる学生やピアノに熱心そうな母娘連れが目にとまる。
  ステージにはグランドピアノが一台。開演前の静まりで、遅れてきた客のヒールの足音が会場に響き渡る。うつむいたままの猫背の上原ひろみ。手が動いた。速い、止まらない。練習曲ぽいけど、リンゴの皮むきみたいにずっと音が連なって、その皮が薄かったり、厚かったり、細かったり、太かったり、ともかく密度のある音の塊が途切れない。かつてアルバムを聴いて弾力ある感触と感じたのはこの立体感のある音色のようだ。
 イタリアの海のシシリアンブルー、ニューヨークのハイウェイと摩天楼、ホームタウンとなったスイスのベルンやポルトガルと、自身の体験をもとに世界旅行に誘ってくれる。青いイタリアの海を表現するにも、水面のさざ波を想起させると思ったら、突然、海深く潜り、そして次の瞬間には空高く舞い上がり島や船や海を見下ろす。
 上原ひろみは画家のタイプではなく、彫刻家で、建築家なんだろう。音の広がりと組み立て方、削り方、俯瞰する自在の視点がそれを物語る。そして子供のままの感性と感情の爆発。摩天楼のなかを走るハイウェイでの疾走感。モーター音や加速度の体感を擬音して、過ぎ去る風景描写を一台のピアノと全身を使い表現する。腰をうかせ、手を打ち、響板を叩き、踵を床に打つ。弦とハンマーに直に触れ、鍵盤だけでは出せない高低の音色でタンバリングする。随所にタン、ハン、アンと叫び、スキャットまで飛び出す。自由奔放な表現を支えるのは、天賦の才能と熟達したピアノさばきだ。打鍵の深さ、速さ、指の運びを曲ごとに完璧にコントロールする技量が驚愕のステージを生み出す。高いテンションのものから、柔らかで温かい音の膨らみも卒なく軽やかに紡ぎだす。
 大の食いしん坊だといい、世界の甘いものを食べ歩く。フランスのシュー・ア・ラ・クリマ(シュークリーム)を口にしたときの喜び。舌が甘さを感知し、ドーパミンがシナプスを伝う、そのひとつひとつが擬人化されはしゃぎだす。二部の最後はラスベガス三部作。ラスベガスのきらびやかな夜のショータイム、真昼の太陽、ギャンブラーの興奮と失望。スロットの擬音で会場とかけあうコールアンドレスポンス。作曲家としての能力もすごい。ジャズという表現ジャンルをこえたら、後世に残るバラードさえ生み出せそうだ。
 途中で10分の「調弦」休憩をはさみ、2時間半フルパワー。後半で演ったカノンでは、ただ綺麗にまとめるだけでなく、鋼線に細工をしてかすれた音色を練りこむような演出をしてくれる。派手な楽曲のあと、タオルで汗を拭きながら現れアンコール。最後の曲ですと、PLACE TO BE(自分の居場所)を演奏。カノンと同様にほっとするような、心地の良さがある。こういう上原ひろみもいい。かといって、彼女がそれで終わるわけがない。またジェットコースターが動き出す。ジャズフレーズをリフレインし、会場を沸かせ、手拍子が起こる。響板を叩き、床を踏み、跳びはねる。上原のパフォーマンスでさくらぴあホールのアラジー、アラバーも笑顔だ。ピアノとも会場とも一体となって感情を爆発させた上原ひろみ。高々と拳を振り上げてステージを去って行きました(^^)