2011年11月22日火曜日

SPITZ 晩秋TOUR  @広島市文化交流会館 2011.11.22

偶然手に入ったSPITZのチケットの日付は、2011.4.8。ボーカルの草野は3.11以降の津波や原発の連日の苛烈なニュース映像で精神バランスを崩し休養。半年を過ぎての広島2DAYSの2日目、ほぼ開演時刻通りにガラスの少年、草野がギターを抱えて登場。観客は総立ち。9割は女性だ。

青いポロシャツの小柄で痩せた草野がエレキギターを掻き鳴らして強めのビートの曲を歌う。背後のスクリーンにはアラフォーを感じさせない端正で若々しい横顔が映し出される。こざっぱりとしたふつうのバンド青年の印象。あらためてSPITZはバンドだ。草野がアコギを抱えているイメージしかなかったが、もう25周年を迎えるという。草野もエレキを持ちツインギターでリフに応じる。

2曲を終え、ようやくMC。みなさんお待たせしてごめんなさいと草野。アコースティックギターを手にロビンソンを歌う。♪大きな力で空に浮かべたらルララ宇宙の風に乗る。ミディアムなテンポの曲だと、草野の声が活きる。高みに向けて、スっと声が軽やかに駆け上がるとき、左胸の奥で金の糸が爆ぜて溶ける。草野の声は、ロビンソンの歌詞とともに刷り込みされて、いつも浮揚感を覚える。共鳴がなめらかで高音域で気持ちよく伸びていく。

さだまさしのライヴを観て、MCをなんとかしようと思ったという草野は、「あんたのバラード」(広島を意識?)を急にシャウトしはじめたりして、意外に多弁だ。福岡出身でソフトバンクのファン。シビアな試合が続くと緊張して手足が冷たくなる性分で湯たんぽを抱えて応援していたという。長年、草野を支えてきたバンドメンバも、拙いMCを優しくフォローする。今年観たほかのビッグネームのアーティストはこぞって震災の復興を呼びかけていたが草野は3.11には一切触れなかった。彼らがアーティスト活動をしっかり続けることが東北のファンへの応えなんだろう。