古い民家が並ぶ倉敷美観地区の裏手路地にジャズ喫茶AVENUEがある。予約して正解でした(^^)グランドピアノの蓋を開けた側、というかピアノのすぐ横で、演奏する妹尾美穂やメンバの表情が見えて、落ち着いて聴けるテーブル席という最高の席でした。
民家を改造したAVENUEは不思議な配置。ピアノが店の真ん中にあって、バンドの後姿を見る側がテーブル席が多い。ステージがない日は地元の常連がゆったりと珈琲を飲んでいるだろう。控え室は土間からあがる物置スペース?きっと冬には炬燵があってわいわいやってるに違いない。
一年前、初めて見たとき妹尾美穂はコギャルの高校生だった。まさかジャズトリオのリーダがアンパンマンショー的な明るいキャピ声の主であるわけがないと。(のちに年齢はそれなりであることを知る)AVENUEのドアを開けると、妹尾美穂の明るい笑顔が迎えてくれた。今日の衣装は、白と黒でピータパンがスカートとブーツを穿いた妖精不思議ワールド。・・似合う(^^;)常連や、ひさぶりに妹尾美穂に会いにきた友人たちが、早い時間から詰めかけてくる。店は大入り、客は20代後半から70くらいまでいろいろ。バンドを360度囲んで出番を待つ。
相変わらずの明るいトーンで挨拶とメンバー紹介。ポピュラーナンバーから軽やかにピアノが響く。妹尾美穂は空から音符の雨を降らしたり、水滴を水流に変えたり、色彩を自在に扱うなどいろんなマジックができる。そして妹尾美穂のピアノはどんなに叩きつけても音がモイスチャーリンスされてて肌ざわりがいい。
中盤にさしかかって、左の口角が動き、妹尾の頬筋が緊張と興奮で盛り上がる。入っている、ハマっている。硬質にたたみ掛けたピアノのリフがテンションを積み上げて、ターん!、ハあー!と美穂波が発せられるようになると、妹尾美穂が愛してやまないAVENUEのピアノがそれに応える。ヤー、マー、波あ!と(^^)積み上げた音の城壁を一気に崩すカタストロフを迎え、緊張が溶ける。ピアノからベースへ、ドラムへとドラマが展開されていく。美穂トリオを囲む客が揺れて、それぞれがみんな楽しそうだ。思い思いに声を発し、拍手する。
今回特に印象に残ったのは4曲。一部の最後の曲の「JAMES」。晴れた心地の良い朝。木漏れ日の下を自転車で軽やかに疾走して、5月の陽射しと風を全身に受けとめる。仕事も恋も、人生で一番充実している時期の喜びを表現しているような楽しい曲。
二部では「忘却」。水のなかへ静かに沈む音の塊たち。短く刻んだ音が連なりがゆっくりと水底へ沈んでいく。 トリオの遊びが楽しい「CONFORMATION」。伊予平のベースパフォーマンスに驚き、はしゃぐ妹尾美穂の表情がおもしろい。片岡洸の素手打ちまで飛び出す。
そして大好きな曲「ソングオブサイレンス」。東山魁夷の絵画「静唱」からインスパイアされた楽曲。気合入れて譜面台をあげて一呼吸いれる。ピアノソロがしばらく続いたあと、ベースとパーカッションが寄り添い曲が動く。木立を抜ける風が、さざ波となり湖面を走ったとき、胸がザワつき、鳥肌が立った。水面に落とされた陽光のきらめきのひとつひとつをピアノが表現する。木と風と水面と陽光がアンサンブルを奏でる。風が止み、また湖畔に静寂が訪れる。聴衆は最後の共鳴の余韻に浸る。長い沈黙のあと、笑顔と割れんばかりの拍手が待っている。
バンドのグルーヴだけでなく、AVENUEという空間のグルーヴを感じます。
妹尾美穂トリオ今後も必見です。そして絶対、妹尾美穂の表情が見える席をお奨めします。そのほうが妹尾美穂トリオを倍楽しめますよ(^^)
http://mihopower.blogspot.com/
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