2010年3月14日日曜日

和泉宏隆ピアノトリオ 鳥取 アフター・アワーズ 0314

 銭湯の二階にある鳥取のライヴハウス(アフター・アワーズ)にT-SQUREの和泉宏隆がピアノトリオでやって来た。T-SUAREの黄金期('83~)を支え、1998年に 脱退したあと、しばらくの間ソロ活動をして、韓国からの演奏オファーをきっかけに6弦ベースの村上とパーカッションの板垣に出会う。T-SQUAREは1994年に韓国政府の正式承認を得て日本人音楽家として初演奏。フュージョンという音楽が歴史の融解に相応しかったのだろう。和泉のピアノは海を越えても愛されている。 
 SQUARE(THE or T-)はフュージョンの黎明期を牽引した。和泉は、創設者の安藤(G)、伊藤たけし(Sax)に次ぐ在籍歴を持つ中核メンバーだった。バンドとしては、リリコンの音色が印象的なTRUTH('87)で認知度を高め、伊藤が'91に脱退したあともジャズ・ファンク、ブラス・ロックを展開する本田雅人の加入で黄金期を持続した。そのなかで和泉の流麗なピアノが、本来の叙情性の輝きを現わしていた時期がある。
 「NATURAL」('90)は伊藤の最後のアルバム。 このときのSQUAREの音楽がいちばん好きだ。伊藤のウィンドシンセ、安藤のギター、和泉のピアノの配合が美しい。特に、白馬のたてがみが揺れるさまを想起させるゆったりとした曲調の「WHITE MANE」 と、陽光と花と風が戯れる「DAISY FIELD」が心地よい。
 「DAISY FIELD」では、和泉のスリリングでリリカルな打鍵に心が躍る。和泉のソロピアノは果てなく続くジェットコースター。両手にまさしくバタフライ・エフェクトがかかり、途切れることのない音符のシャワーが降り注ぐ。奇跡の右手のオクターブ奏法で高い音域から色彩豊かな情景を映し出す。
http://www.youtube.com/watch?v=a5oNb_lYG9M

 写真はアフター・アワーズのピアノ。和泉の奇跡の右手が見える場所で楽しむことができた。6弦ベースの音も多彩だ。まろやかな音色で、ギターの領域もすべてカバーする。ライヴは2ステージ。新しいアルバム「covers NOSTARSIA」を中心に、ソロピアノ作品集や、SQUARE時代の懐かしいメロディーも響かせてくれた。
 上原ひろみが繰り出すジェットコースターは、ひとつひとつの打鍵が隙間なく無機質な造形物を生み出すような質量感を抱かせるが、和泉のジェットコースターソロは、圧倒的な水量で聴く者を包み込む。 その予想のつかないスリリングな流れが胸を疼かせる。ピアノトリオは心地よいバランスで観客を沸かせてくれた。
 妹尾美穂もまた、このアフター・アワーズのYAMAHAから水流を操り、のびやかな絵を描く。ピアニストには彫刻家と画家がいる。近いうちに、妹尾美穂のモイスチャーリンス・ピアノと笑顔に会いに行こう。

「covers NOSTARSIA」からの演奏曲
・Someday We'll All Be Free ダニー・ハザウェイ
・As スティービー・ワンダー
・I Need To Be In Love カーペンターズ
・What You Won't Do For Love ボビー・コールドウェル
・What's Going On マーヴィン・ゲイ
・Through The Fire チャカ・カーン
・Valdez In The Country ダニー・ハザウェイ

0 件のコメント: