2013年7月27日土曜日

真夏のぎらり Summertime 飯田さつき @学芸大学 珈琲美学

   ぎらりヴォイスの飯田さつき。正統派ジャズシンガーながら、その低音のキレはぎらり、ざらりと琴線にひっかかる。妹尾美穂の「Ki-Ra-Ri」でなく濁音の声質の魅力だ。オープニングの「Summertime」でも、如何なく真夏のぎらりで、飯田の世界に観客を惹きこむ。
「わたしには珍しい清楚」な白いドレスで登場。14歳から体型が変わらない飯田さつき。その頃のピアノ発表会のときに新調した服だという。昔からあがらない気質で、お客さんがたくさんいると勝手に口角があがるそうだ。

 2曲目の「Love Letters」はボサノバ調で、ぎらりから一転する。Love letters straight from your heart♪のリフレインが優しい。149㎝の小柄な体躯の共鳴腔をたくみに操り、高音域では、軽やかでそして柔らかな音色を生み出す。計り知れない「ぎらり」の魔力。「ふわり」な歌唱表現も素敵だ。


  「How About You?」も楽しい。わたしは6月のニューヨークが好き、あなたはどう?替え歌にして、いろんなHow about you ?を客席に投げかけてくるが、一番、飯田が楽しそうだf^^;

 「Will You Still Be Mine」や「My Foolish Heart」など、恋の行方を危ぶむ歌が妙に似合う。本人曰く、ティーンエイジャーでなくアラサーの今だから表現できると。低い音域から高音域への音調が滑らかで、クリアに響く共鳴が心地よい。

 Jazzの枠に収まらない飯田さつき。映画主題歌の「追憶"The Way We Were"」の歌唱では、ぎらりの魔力に鳥肌が立つ。骨太でスケール感のある楽曲を舞台に、のびやかに高らかに歌い上げる。

 この10月には大好きなニューヨークで、ワンマンライヴとセカンドアルバムのレコーディングが待っている。明るくて、ひとなつこいハイブリッド?フェイスとぎらりヴォイスの飯田さつきを、ニューヨーカーはどんなふうに受けとめるんだろう。
 ニューヨーカーに伝えたい。I like "magic of a ギラリ". How about you ?

2013年7月6日土曜日

海を渡った島唄の20年 宮沢和史 Alfredo Casero & 空飛ぶお姐さん

でいごが血のように紅く色づいた4月にアメリカがやってきて嵐(戦争)がきた

愛を誓ったウージの森(さとうきび畑)。その下に掘られた防空壕で恋人達が自決した

島唄は鎮魂の歌だ。

20周年記念でアルバムが出るという
http://www.bl-dg.co.jp/shimauta2013/

11もの国で日本語のまま歌われる島唄。島唄は風に乗り、鳥とともに海を渡った。
純粋に、この楽曲が持つエナジーが受け入れられ、人の心を動かした。

紅白でも共演したAlfredo Casero の島唄がめちゃ楽しい。
★Alfredo Casero と 空飛ぶお姐さん
 http://www.youtube.com/watch?v=xCPtiazkBcY

空中浮遊するお姐さんの裏拍子の合いの手(アイヤイヤササ)が絶妙です^^

Mebius Mami & Norie 夜の星にのぼって @ダイアモンドダストファルセット

  広島には小さなバー兼ライヴハウスがたくさんあって、地元のミュージシャンや音楽愛好家に演奏の機会を与えてくれる。2010年1月、そんなハコに他の共演者とともにMebiusがいた。酔っ払いのしょうもない話につきあっていると、女性が二人ステージにあがり、スタンドマイクとキーボードに向かった。

 まず呆れた。理解不能だった。目の前にいきなり完成度の高い正体不明のスーパーデュオが現れ、その圧倒的な歌唱(重厚で繊細なハーモニー)に呑み込まれた。いままで、このハコで体験したことのないダイナミズム(力量)が目の前に存在している。60秒もたたないうち、二人の歌声の虜になった。胸が熱くなって叫びたくなるような喜びが湧きあがる。ドーパミンが爆ぜリズムを刻む。とにかくこの才能に出逢えたことが嬉しくて幸せな気分だった。

  ハウスミュージシャン離れしていたのは当たり前で、すでに2008年3月にメジャーデビューしていたMebius。オーディション音源は、選ばれて当然の原石だった。
★デビューシングル「夢のカケラ」のPV (カップリングは「オレンジ」)
 http://www.youtube.com/watch?v=tgtvahJqTpk
 http://www.uta-net.com/movie/63432/  

  筆で有名な熊野にはお好み焼き屋「鏡(かがみ)」がある。もと演歌歌手「鏡きょう子」に纏わりつく熊野中の不良バンドが夜な夜な集っていたらしい。その音楽とお好み焼きを愛する母親から生まれた姉妹が織りなす純度100%のシンクロニシティは奇跡のハーモニーを生む。
 
 
   岡田真実(Mami)と賀江(Norie)。ボーカルパートはどちらがどこを担当しても、質の高い作品となる。ファルセットもそれぞれの特長があり美しい。Mamiは低い音域で始まる「夢のカケラ」を歌うに適した共鳴腔と「オレンジ」で響かせる倍音ファルセットを有する。Norieの共鳴腔は強い音をクリアに遠くまで響かせ情感を運ぶ。それに加えて、ほとんど区別つかない姉妹のダイアモンドダストファルセットがクロスオーバーすると無敵のハーモニーになる。(聴き分けるのはあきらめた)

   アンジーのボイストレーナーとしてもメディアに取り上げれられることが多くなったchibi先生も二人の才能を見出し愛を注ぐ。そのchibi先生が「スコンと前に抜けた」と評する共鳴をもってすれば、愛を失う慟哭はこんなふうに表現される。ツインヴォーカルユニットとしてのプレゼンスを存分に示す作品だ。
★「夜の星にのぼって」
http://www.youtube.com/watch?v=ZMfppx6aY6o

   Norieは遠くに響くよくとおる声を持つ、Mebiusのリードヴォーカルだ。だからこそ、個性をどう出すかで悩む時期がある。力めば、ローングトーンが裡にこもり、外に開放されず、ベタっと重くなる。地声を生かそうとすれば、荒さや雑味が浮かぶ。何度も自分の声に繰り返し向き合って歌唱を磨き、聴衆の心に真っ直ぐに届くクリアで力強い声を手に入れた。芹洋子が手掛け30年前から広島で親しまれている「花ぐるま」だが、まさしく花のような馥郁さを纏うNorieの声に思わず拍手してしまう。この完成域は凄い。
★広島フラワーフェスティバル「花ぐるま」
http://www.youtube.com/watch?v=vDMz6wCNSUY
 
  好きなバンドの曲を聴くと元気が出るってのとはちょっと違う。もっと直接的に生体システムとして物理的に感応させる倍音の威力。いわゆる浄化作用まで生む力がこのハーモニーにはある。
 で、シングルデビューから5年、ようやくそのときが来た。広島CLUB QUATTROでのワンマンライヴの日にアルバム「夜の星にのぼって」もリリース開始とのこと。アルバムひっさげて東京にきてほしい
http://www.candy-p.com/web.php?menu=performance&cmd=artist&id=312