2013年7月6日土曜日

Mebius Mami & Norie 夜の星にのぼって @ダイアモンドダストファルセット

  広島には小さなバー兼ライヴハウスがたくさんあって、地元のミュージシャンや音楽愛好家に演奏の機会を与えてくれる。2010年1月、そんなハコに他の共演者とともにMebiusがいた。酔っ払いのしょうもない話につきあっていると、女性が二人ステージにあがり、スタンドマイクとキーボードに向かった。

 まず呆れた。理解不能だった。目の前にいきなり完成度の高い正体不明のスーパーデュオが現れ、その圧倒的な歌唱(重厚で繊細なハーモニー)に呑み込まれた。いままで、このハコで体験したことのないダイナミズム(力量)が目の前に存在している。60秒もたたないうち、二人の歌声の虜になった。胸が熱くなって叫びたくなるような喜びが湧きあがる。ドーパミンが爆ぜリズムを刻む。とにかくこの才能に出逢えたことが嬉しくて幸せな気分だった。

  ハウスミュージシャン離れしていたのは当たり前で、すでに2008年3月にメジャーデビューしていたMebius。オーディション音源は、選ばれて当然の原石だった。
★デビューシングル「夢のカケラ」のPV (カップリングは「オレンジ」)
 http://www.youtube.com/watch?v=tgtvahJqTpk
 http://www.uta-net.com/movie/63432/  

  筆で有名な熊野にはお好み焼き屋「鏡(かがみ)」がある。もと演歌歌手「鏡きょう子」に纏わりつく熊野中の不良バンドが夜な夜な集っていたらしい。その音楽とお好み焼きを愛する母親から生まれた姉妹が織りなす純度100%のシンクロニシティは奇跡のハーモニーを生む。
 
 
   岡田真実(Mami)と賀江(Norie)。ボーカルパートはどちらがどこを担当しても、質の高い作品となる。ファルセットもそれぞれの特長があり美しい。Mamiは低い音域で始まる「夢のカケラ」を歌うに適した共鳴腔と「オレンジ」で響かせる倍音ファルセットを有する。Norieの共鳴腔は強い音をクリアに遠くまで響かせ情感を運ぶ。それに加えて、ほとんど区別つかない姉妹のダイアモンドダストファルセットがクロスオーバーすると無敵のハーモニーになる。(聴き分けるのはあきらめた)

   アンジーのボイストレーナーとしてもメディアに取り上げれられることが多くなったchibi先生も二人の才能を見出し愛を注ぐ。そのchibi先生が「スコンと前に抜けた」と評する共鳴をもってすれば、愛を失う慟哭はこんなふうに表現される。ツインヴォーカルユニットとしてのプレゼンスを存分に示す作品だ。
★「夜の星にのぼって」
http://www.youtube.com/watch?v=ZMfppx6aY6o

   Norieは遠くに響くよくとおる声を持つ、Mebiusのリードヴォーカルだ。だからこそ、個性をどう出すかで悩む時期がある。力めば、ローングトーンが裡にこもり、外に開放されず、ベタっと重くなる。地声を生かそうとすれば、荒さや雑味が浮かぶ。何度も自分の声に繰り返し向き合って歌唱を磨き、聴衆の心に真っ直ぐに届くクリアで力強い声を手に入れた。芹洋子が手掛け30年前から広島で親しまれている「花ぐるま」だが、まさしく花のような馥郁さを纏うNorieの声に思わず拍手してしまう。この完成域は凄い。
★広島フラワーフェスティバル「花ぐるま」
http://www.youtube.com/watch?v=vDMz6wCNSUY
 
  好きなバンドの曲を聴くと元気が出るってのとはちょっと違う。もっと直接的に生体システムとして物理的に感応させる倍音の威力。いわゆる浄化作用まで生む力がこのハーモニーにはある。
 で、シングルデビューから5年、ようやくそのときが来た。広島CLUB QUATTROでのワンマンライヴの日にアルバム「夜の星にのぼって」もリリース開始とのこと。アルバムひっさげて東京にきてほしい
http://www.candy-p.com/web.php?menu=performance&cmd=artist&id=312

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