2010年5月30日日曜日

京橋川 比治山の新緑と昼寝猫 0530

 京橋川沿いも比治山も新緑が輝く季節。比治山の猫は思い思いの場所でお昼寝。
  生きる目的って何?と問うと、だって、生き物だもん。だから生きてるんだよって。
   目的があるから生きるわけじゃない。生きてるからそのための生活がある。比治山だから冬の寒い日もあるけど、こういう心地よい陽射しのときもあるし、仲間とじゃれあうのも楽しいって。「猫は幸せになるために生きている」なんて世迷い言は原理に反してるし、ほかの家猫との境遇を比べたってしょうがない。
   この比治山で生まれ育つそれぞれの唯一無二の運命をひたすら全うするために今を生きてるんだってさ。
 比治山のジェリクル達に迷いはない。比治山に降り注ぐ五月の陽射しを全身で楽しんでる。

2010年5月29日土曜日

玉城ちはる さらさ カジル横川 風になれば 0529

 
 今日のカジルでの「風になれば」は、この三年間で一番美しい「風になれば」だった。全国行脚してたときのAPPLE JAMや福屋、真夏の水辺でジュディオング衣装だったとき、冬のJIVEのペンライトに涙したとき、そして、CDで聴く「風になれば」より、そのどれよりも素晴らしかった。
 懐かしのフォーク路線にいた頃、役柄上、少し地味めで抑揚のないフォークをおとなしく唄う印象が強かった。まだ、玉城ちはるの「歌」ではなかった。「風になれば」も声枯れで切々と歌っていた印象がある。それが翌年の夏には、さらさを引き連れ、水辺のコンサートでジュディオング衣装を纏い伸びやかな歌声を披露しイメチェンを遂げる。そして、その直後には、シンカノハモンで情念の玉城として覚醒する。「もう行かなきゃ気づいたのだから。・・・失うものは何もない」ついに、メガネナイトでは、エロ玉城の確固たる地位を築きあげる。「それよりきみのスカートの中が見たい」

 五月晴れの夕刻、さらさのmachiko先生が最近めきめきと自信をつけてきたMCで玉城を紹介する。ようやく涼やかになった風がカジルのステージを渡る。その1曲目が「風になれば」。
 これほど澄みわたった声質の玉城ちはるは初めて。アルバム制作のため一ヶ月の間、喉を休めていたという。ミスチルのマニピュレータも参加しているとのことでアルバムへの期待がふくらむ。
 柔らかな笑顔で、語りかけるように優しく空に透き通っていく「風になれば」は間違いなく「あなた」の胸に届いてる。アルバムにリミックスしてもいいと思うほどに。
 
 さらさの演奏はアレンジが多彩で音の拡がりがあって楽しい。Earth, Wind & Fireのファンタジーでハープがリズムパートやってたのは印象的だし、ベンチャーズのパイプラインもいい。リードギターがフェンダーのジャズマスターモデルでヒュッってやるのを、machiko先生が悪戯っコの顔して楽しそうにハープの弦をこするのがおもしろい。
 すっかり玉城に鍛えられ、MCも冴えわたるさらさ。夜の路上でも、一番の人だかりで大声援を受けてました。アンコールのルパンまで披露して引き出しが多いです。

2010年5月25日火曜日

BENI (安良城 紅) @ 映画 ブラブラバンバン 

 2000年にヤングサンデーに連載していたブラブラバンバンの映画化。
 弱小吹奏楽部の青春模様をコメディータッチで描いた不思議映画。ヒロインの芹生百合子は音楽にグルーヴを感じると、服を脱いだり男子を襲ったりする暴走危険キャラ。その分、音楽への思い入れは強い。「周りの音を聴いて。私たちは一枚の絵を創るの。トランペットのオレンジ、クラリネットの緑、音が微妙に合わさっていく。その全体のバランスを全身を耳にして感じて。もっと気持ちよく聞こえる音が絶対あるから」
 演奏会では指揮者なのに音楽のうねりに身をまかせ高らかにスキャットを歌いあげる。順位よりも、好きなように感じたように演奏することのほうが大切なんだ。

 主演の安良城 紅は沖縄出身のアーティスト。映画公開(2008/03)の数カ月後、着うた150万件・着うたフル80万件の大ヒットを生む。童子-Tとのコラボ「もう一度・・・feat.BENI」で一気に全国区の知名度を上げる。沖縄ではMAXに代わって、オリオンビールのCMを4年続けているという。そして、この6月にはセカンドアルバム「Love Box」で、さらに熱気を届けてくれるようです。
 01. Lovebox Intro  02. ユラユラ 03. サイン
 04. 瞳とじて  05. ギミギミ♥ 06. Girl's Night feat.JAMOSA
 07. a million jewels  08. 君じゃなきゃ 09. bye bye
 10. MOVE 11. break the rule 12. he is mine
 13. マイ・フレンド 14. Message  15. ずっと二人で unplugged version

童子-T「もう一度・・・feat.BENI」

2010年5月16日日曜日

Garnet crow @ 名探偵コナン 天空の難破船

 名探偵コナン 天空の難破船(ロストシップ)の主題歌はネオアコバンド「Garnet Crow」の「Over Drive」。どこか懐かしい曲調。(序盤の一部が山下達郎のクリスマスイヴにそっくり。オマージュ?)。コナンの主題歌楽曲数では倉木麻衣と肩を並べるGarnet crow。だるそうなアルトが特徴のヴォーカルの中村由利は全作曲をこなしzardにも曲を提供した実力派。
 新一と蘭のラブストーリーに怪盗キッドが割って入る。新一に成り済ましたキッドは蘭の心を惑わし、遂には蘭の唇が奪われたところで、エンディングテーマが流れ出す。
 どうなるんだ?子供のコナンにはキッドの暴走を止められない。シリーズ映画の最後でこんなことして次回からどろどろの三角関係か。これ子供向けだろ?横に座ってる小学生グループの女の子が「えーっ」と声をあげ付き添いの母親がたしなめる。エンディングテーマが流れるなか館内にざわめきが広がる。本筋のストーリよりも衝撃的だ。バイオテロや爆弾騒ぎなど吹っ飛んでいる。
 Garnet crowの演奏が終わるとまだ続きがありました。・・ちょっとやられましたねf^^;

2010年5月9日日曜日

うずら 母の日 @楽座 0509

 2年前のGW前の4月の終わり、水辺のコンサートで初めて「うずら」に出逢った。「贈り物」、「雨のドライヴ」、「春潜」、「きずな」と、音楽活動を始めて半年程度だったのに、完成度の高い楽曲を揃え、聴衆を魅了していた。
 水面に陽射しが揺れ、元安川を渡る風が涼やかだった。そのときの清冽な声の印象を忘れることはできない。それと、スタッフと間違えられるようなよれよれジャージを着ていたことも。
 
 あれから、2年の歳月が過ぎた。うずらは数々のライヴをこなし、コンペティションでも上位入賞したり、アルバム企画に参加して、中堅ミュージシャンとしての地位をしっかり確保している。地元竹原ではすっかり有名人でバンドを目指す中学生の憧れの的だったりする。

 今日は、母の日ライヴ。楽座にはいつもお母さんが来ている。免許証更新で20年前の写真を通そうとしたつわものでもある。お母さんに捧げる「おねだり」も、あったかいうずらの人柄がにじみ出る愛らしい作品だ。

 うずらは第三期に入った。第一期は、眠っていた才能が開花し、感性のまま紡ぎだした珠玉の名曲をひたすら歌っていた時期。第二期は、「きっと、もっと」「ねじを巻こう」を中心に、キーボードテクニックを磨いた時期。そして、第三期は、「虹」「フェイバリットシーン」を携えて、大人の女性の生身の息使いを歌える現在がそうだ。
 「ハイビスカスの雫」のように、男の側からの喪失の切なさを歌いあげるものはあったが、うずらの声の清冽な印象からも、女性の直接的な思いを相手に伝えるようなものはなかった。いまは、愛しい相手を抱きしめるようなそんな歌い方ができている。

 2年前の楽座でも、わけのわからない無国籍Tシャツで出演していたことを思い出す。いまは、なんと、髪型はしょっちゅう変わるし、写真のようにスカーフ巻いてオシャレなうずらになりました(^^)2年前は緊張して客席を凍らせてけど、いまはすっかり客をコントロールして楽しんでいるうずらです。

熊谷育美 月恋歌 にゃむ~ @TRICK 2D 霊能力者バトルロイヤル


 鬼束ちひろがドラマTRICKで「月光」を歌い一躍人気を博したのが10年前。祝10周年で映画化。涙涙で泣けるTRICKだの、飛び出しそうな2Dだの、にゃむ~と10周年だの、基本、ふざけてて安っぽいが上田次郎(阿部寛)、山田奈緒子(仲間由紀恵)、矢部(生瀬勝久)のうさんくささのトライアングルは、それなりに気にいっている。今回ヒロイン夏帆はTVドラマ「オトメン(乙男)」で、岡田将生と共演していた女優。トリックが双子の設定は横溝っぽい。山田の母は書道家の野際陽子。冒頭の習字教室のお手本に「紀伊半多」と書いていた。たしかに、砂かけババアの実写版は本人が言うように野際陽子がぴったりかも。ともあれ、いつものB級落ちのTRICKなので詳細は割愛。(ちなみに、上田と山田の合言葉は「貧」と「乳」)
 今回のエンディングテーマには、仙台在住の歌手、熊谷育美を抜擢。「月恋歌」という、また「月」がモチーフの歌だ。「心と心が丸く重なれば優しくなれることを知った」
心に柔らかく届く良い声をしています。

ジョージ・クルーニー @マイレージ、マイライフ


 3月半ばの公開作だがパルコ近くのシネツインで遅れて上映。5月1日は映画の日で満席で退散。翌日、整理券を持ってようやく観ることができた。

 辣腕ビジネスマンのライアン(クルーニー)の仕事はリストラ宣告人。全米を飛び回り、マイレージポイントは神の域までもう少し。「結婚しない男」でドライにリストラを言い渡すライアンは同じ匂いのする女性アレックスと大人な関係を続けるが、「ネットでリストラ通告」を発案する新人ナタリーの登場や妹の結婚を機に何事にも合理的で効率を重視する彼の心境に変化が訪れる。

 ライアンはドライに見えるが、リストラされる相手を理解しケアすることの大切さを知っている。ナタリーはラブラブな彼がいて愛情の素晴らしさを語るが、大学での研究成果と野心とマニュアルでリストラ宣告を行う。互いに影響しあう二人。ナタリーはアレックスを都合のいい女扱いするライアンを非難する。アレックスと何故結婚しないのかと。

 妹の結婚式でも騒動が起きる。ほとんど家族からも離れ一人で暮らしていたライアンが久しぶりに兄弟親戚に会う。妹の相手は、新婚旅行費用を不動産投資につぎ込む少々頼りないやつだ。その彼が結婚直前に式を辞めたいと言いだす。既婚者よりあんた(ライアン)の方が楽しそうだと。
 君が辛いときって、いつも一人だっただろ。今まで、楽しかったときは、いつも誰かがいただろ?それが家族だよ。君はその絆をこれから築いていくんだよ、と言って婚約者を説得し、姉からあんたもようやく家族だと認められるライアン。

 ライアンはアレックスを家族(結婚)として意識し始めるが、思わぬ挫折を強いられる。人生の挫折を告げるリストラ宣告者の二人が、それぞれの挫折をし、また新たなフライト(傍にいてくれる誰かを求める旅)に発つ。
 ジョージ・クルーニーの表情の変化が絶妙だし、かっこいい。完成度高い映画です。

写真はジョージとジェイソン・ライトマン監督、それから女優陣(アナ・ケンドリック&ヴェラ・ファーミガ)。 

シアーシャ・ローナン @ラブリーボーン

 「私は、スージー・サーモン。お魚みたいな名前でしょ。1973年12月6日、私は14歳で殺された。これは、私が天国に行ってからのお話」
 ボーイフレンドとの逢瀬にときめく14歳の少女が魔の手に落ちる。天国ではずっと14歳。そこでは少女が望むイマジネーションのままの世界が広がる。幻想的で美しい景観の彩りに包まれ、同年代の少女達と戯れる果てしない日々。天国の見晴し台に立つと、スージーを失った家族や友人の苦しみや哀しみ、崩壊していく家族の姿が見える。わたしはここにいるよ、と愛するひとたちへメッセージをおくるがままならない。そして殺人鬼は妹にまで触手を伸ばす。

 1月末に公開された「ラブリーボーン」。可愛らしいボーン。ボーンは少女の愛称ではなく骨のこと。殺されて「小さな骨になってしまった私」のことを天国の少女が語る。(原作ではバラバラにされてしまう)
 アリス・シーボルトの原作は全世界で1000万部のベストセラー。作者自らの痛ましい体験をモチーフに天国へ逝った少女の目で家族愛を描く。
 予告編で「わたしにも何かできるはず」と云っていたので、天国の主人公が周囲を助け犯人を懲らしめる映画かと思っていると何もできないで苦悩するのがもどかしい。犯人探しに奔走する父親、家族を捨てる母親、妹が恋人と愛し合い成長していくさまを、天国から見ているだけ。地上に降りて目の前で叫んでも、気づかれない。微かに空気を揺らし、さらに愛するものを追い詰めるだけだ。
 
 ボーイフレンドと成しえなかった愛する日々のなかに妹はいる。妹の成長は嬉しい。ただ妹はスージーには永遠に掴むことができない喜びを知り、愛し合う相手がいる。死者であることを嘆き哀しむスージー。
 妹は父を信じる気丈な娘に成長した。犯人の家に侵入し、危険を冒しながら証拠を掴む。犯人は逃走の道中で、新たなターゲットに声をかけたところで天罰を受ける。そして、スージーは、霊感の強い少女の身体を借りて、傷心のときを過ごすボーイフレンドとようやく向き合うことができる。
 
 陰惨な題材だが、シアーシャ・ローナンの愛らしい魅力と美しいCGに圧倒される。物語として主人公が直接悪を成敗するものではないのでそこには期待しないこと。焦点は家族愛・絆(わたしがいなくなった後に育った可愛い骨)。
 シアーシャ・ローナン(Saoirse Ronan [ˈsɪrʃə ˈroʊnən]、1994年4月12日)はアイルランド人。名のSaoirseはアイルランド・ゲール語で「自由」を意味するらしい。シアーシャの次回作は14歳の殺し屋役。ジャン・レノのニキータを越える作品になるかも。
 映画を観るときには水分を断つこと。ポップコーンとペプシのラージサイズ。祖母役のスーザン・サランドンが母親の家出のあと、さらに家をぐちゃぐちゃにするコミカルシーンのとき席を外せばよかった。あれが唯一のチャンスだったのに。トイレを我慢して物語やCGを落ち着いて鑑賞できなかったのが心残り(:_;)

2010年5月5日水曜日

Mebius @フラワーフェスティバル 広島駅前福屋 0505

 最近、JAのCMやイベントゲストでよくTVでも流れるMebiusの歌声。フラワーフェスティバルの最終日は駅前福屋の6Fステージに登場。リハーサルの音出しは真剣、入念なチェック。プロの顔です。なんといっても声質が近い姉妹の奇跡のハーモニーが武器。それを最大限発揮できるバランスをしっかり確かめてました。

 オープニングは松任谷由実の「春よ、来い」。ユーミンの中では曲調がマイナーかつ展開が単調で好きな曲ではない。ところがMebiusの歌唱力があれば楽曲の素材がきっちり活かされる。
 Norie(妹)のキレのある伸びやかな声が響き、キーボードのMami(姉)の声が重なると、シンクロ純度100%の奇跡のハーモニーへ昇華する。
 
 ボーカルパートはどちらがどこを担当しても、質の高い作品を提供してくれるのだろう。ファルセットもそれぞれの特長があり美しい。Mamiは低い音域で始まる「夢のかけら」を歌うに適した共鳴腔とダイヤモンドダストファルセットを有し、Norieの共鳴腔は強い音をクリアに遠くまで響かせる。それに加えて、ほとんど区別つかない姉妹のファルセットがクロスオーバーすると、無敵のハーモニーが生まれる。
 
 故郷広島を思う「八月の空」のサビの力強い圧巻のハーモニー、「オレンジ」でのダイヤモンドダストファルセット、「青空」で聴かせる広がりのハーモニー。自分のなかに琴線って、こんなにあるの?というくらい響く。好きなバンドの曲を聴くと元気が出るってのとはちょっと違う。好きには違いないがシステムとして物理的に感応してしまう。いわゆる浄化作用を生む力がこのハーモニーにはある。
 
 JIVE、クアトロに続いてMebiusライヴは3回目。聴く度に心が喜ぶ。シングルに続いてアルバムが期待される時期。写真は、ライヴ後の姉妹の2ショット。バラ祭りには行けないけど、また、近々、手頃なライヴハウスで、ダイヤモンドダストシャワーを存分に浴びたい。(洋楽カバーもたくさん聴きたいもんです)

さらさ 音時計 @マルコポール 0505 

 連休の最終日は水曜。ということで「さらさ」のマルコポールのランチタイム定例演奏へ。フレンチのランチセットを味わいながら「さらさ」を楽しむ。常連さんたちも連休最後のさらさに逢いにきている。観光名所「縮景園」に隣接するレストラン。県外客も含め店内は満席。
 
 ランチタイムのBGMだから、名物のブツ切れMCが聞けず残念f^^;新アルバム「音時計」から新曲を披露してくれました。ランチタイム仕様で、盛り上げ定番の「情熱大陸」や「君の瞳に恋してる」で弾糸もストロークもちょっと抑え気味。そのなかで「赤いスイートピー」はハープが小鳥のさえずりのように軽やかで心地よかった。オリジナルの「デュオローグ」では、ギターの流麗な弦の響きでイントロから魅了される。ハープも寄せては返す波のようにいろんな音色で会話に応える。いつもながら、瞬時にきらめくハーモニクスが美しい。「放課後の音楽室」も初めて聴いたナンバー。いつまでも進化する「さらさ」です。

2010年5月4日火曜日

矢野顕子 @広島クラブクアトロ 0501

欲しいものは たくさんあるの きらめく星くずの指輪
  寄せる波で組み立てた椅子 世界中の花集めつくるオーデコロン ♪

 上記の歌いだしで始まる「ひとつだけ」はYMOや鮎川誠の豪華バックで話題となった1980年秋の傑作アルバム「ごはんができたよ」におさめられている。(矢野はこの年のYMOワールドツアーに同行して活躍)
 誰も真似できないアッコちゃんワールドに溢れたアルバム。「TONG POO」、「げんこつやまのおにぎりさま」、「ごはんができたよ」など矢野の舌たらずな声と予測つかないスキャット、切れ味のよい電子ビート(高橋ユキヒロ)の虜になった。このアルバムを聴いてしばらくは、フォークやロックが色褪せて感じたくらい。feelin' groovyとはこのこと、ともかくノリが心地よい。のりのりグルーヴの海を堪能したあと「ひとつだけ」で柔らかにクールダウン。毎日毎日繰り返し聴いていた。

 矢野は、昨年、広島で聴いた二人のアーティストとも共演している。上原ひろみとは去年オランダと東京のジャズフェスで、そしてTHE BOOMの宮沢とは20年来のつきあいだ。まだ「島唄」がヒットするまえの宮沢の才能を認め「釣りに行こう」をデュエットし自身のアルバム('91)にも収めている。
(94年にはネスレのCMに「二人のハーモニー」で宮沢和史と共演)

 開演時間を過ぎ照明が暗くなり拍手が沸く。明るくなったステージにはアルミ箔のラミネートチューブに巻かれたアッコちゃんが手を広げて立っていた。ほがらかによくしゃべるアッコちゃん。手拍子に挑む客には、ついていけなくなるから能力を超えることしちゃだめよとたしなめる。今回はアルバム音楽堂(カバー中心)の弾き語りツアー。
 翌日は忌野清志郎の一周忌。遺作「恩赦」('93) を弾き語る。・・恩赦 on my mind 恩赦 for me・・清志郎へのオマージュは続く。「きよしちゃん」では、きよしちゃん、いい曲だね、いい歌だね・・・どうしちゃたんだい、きよしちゃん、どうしちゃたんだい、ヘヘイヘイとリフレインして親交の深かった仲間へ献歌する。新アルバムのなかでは、英語の曲「Say It ain't I So」が印象的。30年前の「カラード・ウォーター」に共通する水底の水のうねりを感じるような寒色系の仕上がり。

 アンコールは3曲。冒頭に紹介した人気曲「ひとつだけ」、THE BOOMの名曲「中央線」(宮沢も愛されている)、そして百恵ちゃんの「いい日、旅立ち」。ほとんど原曲のおもかげはなく、アッコちゃんアレンジでイイヒ、イヒ、ウア、ハヘ、イィヒ、イヘなど独特のスキャットが強烈。
  
 おみやげつきライヴでした。綾鷹(お茶)が二本。いま真田とCMで共演してるキャッチコピーは、「お茶がにごる。心がつながる」。ライヴ帰りに重いし二本もいらない。欲しいものは、ひとつだけ。

 欲しいものは ただひとつだけ
  あなたの心の 白い扉 あける鍵 ♪

2010年5月1日土曜日

井上真央@ダーリンは外国人

 『花より男子F(ファイナル)』の映画初主演で2008年の日本の興行収入ランキングで2位という記録を打ち出した井上真央。松潤人気、宇多田ヒカルのFlavor Of Life(世界記録:700万ダウンロード)と話題満載で牧野つくし役は見事なはまり役となった。

 で、『ダーリンは外国人』は井上真央の主演三作目、興行ランキングは初登場第三位。外国人との生活習慣の違いや両親との諍いでひと悶着。
「すれ違いなんかあたりまえ。ひととひとが理解しあうのに、外人も日本人もない」と母親役の大竹しのぶ。
牧野つくしのようにわかりやすく確立されたキャラではない今回は個性がみえなくて役作りが物足りない。「牧野つくし」は、他の若手女優がやるよりもやはり井上真央だよなってものがあった。(ノダメは前・後編見たけど、やっぱり上野樹里)
 この映画では大竹しのぶをはじめとするベテラン勢とガラスの心臓のトニー(ジョナサン・シェア)にもっていかれたかな。映画としてのFlavorは、ハートウォーミングでとてもええかんじでした(^^)

(キャスト)
さおり:井上真央
トニー:ジョナサン・シェア
三佳:国仲涼子
遼子:戸田菜穂
一江:大竹しのぶ
正利:國村隼 ほか

AVATAR/風の谷のナウシカ/エヴァンゲリオン 

 昨年末、公開初日にAVATARを見た。3D目当てだったのだが、ほどなくこの映画がエヴァとナウシカからインスパイアされたものであることに気づく。あまりにあっけらかんとあからさまなパクリなので米国も中国を責められない。岡本真夜が盗作問題で注目を集めたように、日本のアニメが改めて評価される機会となったようにも思う。

 主演のサム・ワーシントンは英国人で次回のボンド候補。最新作「タイタンの戦い」(これも3D)ではAVATARの車椅子では見せられない派手なアクションを披露してくれた。メデューサ、クラーケンとの戦いは手に力が入るくらい迫力があって楽しかった。黒いペガサスは乗り心地よさそう。
 話をAVATARに戻そう。ジェームズ・キャメロン監督はミヤザキへのオマージュをAVATARに込めたとも言っているらしい。自然との共生、環境破壊に怒る動植物、空を翔ける浮揚感、星(谷)全体の共感覚などナウシカのテーマそのもの。天空に浮かぶ巨大な岩やもののけを乗り回す強い女性も、そのまんま宮崎アニメだ。
 そして、車椅子の主人公が惑星パンドラに派遣された理由は双子の兄のアバターとDNAシンクロ率が高いから。碇シンジとエヴァ初号機のシンクロ率(エヴァンゲリオンとその搭乗者のA-10神経接続を行った際の同期率)の初回数値に周囲が驚く設定と酷似する。

 (エヴァンゲリオンの主人公である碇シンジはさえない14歳の少年。ジャンヌダルクは14歳のとき天使ミカエルのお告げを受けフランスを救う。聖なる14歳。エヴァのパイロットたちはみな母がいない。それぞれのエヴァに母の魂が宿り、14歳の子供だけがエヴァを操れる)

 エヴァンゲリオンは汎用人型決戦兵器として創られた人造人間である。アダムが生み出した使徒とエヴァとの戦いが始まる。リリス(悪魔の妻)から生み出されたリリン(人間)が神を越えようと人類補完計画を企て迷走する物語は一時期社会現象となった。

 2007年9月1日の日本経済新聞のコラム「春秋」に綾波レイが登場する。
 綾波レイに思いを寄せる男性は日本中に百万人はいるだろう。冷淡なほど無口で無表情な十四歳の謎の少女。包帯姿で現れた現代の女神は日本アニメの申し子だ。その儚げな存在感の内には、決然とした「迷いのなさ」を秘めている。95年にテレビ放送された『新世紀エヴァンゲリオン』の新作映画が、きょう公開される。・・・綾波レイが最初に「降臨」したとき、日本人はバブル崩壊で自信喪失のどん底にいた。傷だらけになって人造の巨人に乗り込み、無言で毅然と敵と戦い続ける綾波への共感はその時代に根ざす。フィギュアとは、無意識の信仰を形にした現代の偶像だろう。経済は立ち直っても、日本人の心には虚ろが残ったのか。 (抜粋)

 ところが監督の庵野秀明はNHKのファンの集いで社会現象(宗教的解釈等)となった内容に触れ「あ、あれは衒学ですよ」とあっさり思わせぶりであることを認めてしまう。庵野は碇シンジは俺自身だと話したことがある。エヴァに乗る以外取り柄がなく、誰とも打ち解けない主人公。つまり、ATフィールド(心の壁/ヤマアラシの針)で人との関わりを避けた少年時代をモチーフとして、人と人との深い関わりをサードインパクト(人類の融合)というテーマに昇華させた個人的な物語が正体だ。それがすっかり大がかりな展開となって、ハリウッドでの実写版プロジェクト(Project E)が進行しているという。

 写真は、実写版の綾波レイのイメージ。YOUTUBEには「リング」のイライジャ・ウッド主演の予告編まで投稿されている。イライジャは童顔だけど30近くなって14歳はきついな。ハリウッドの日本アニメだよりはまだまだ続きそうです。 (予告編エンドロールのAKI MAEDAって誰?)
http://www.youtube.com/watch?v=75GoCvuB8Ow
http://www.youtube.com/watch?v=jcA9qsf4JDI&feature=related