2009年11月29日日曜日

MISIA  星空のライヴⅤ 鳥取 1129 

 「つつみ込むように・・・」でデビューしたのがもう12年も前。当時はまだ19歳だった。その唐突な才能の出現の衝撃度は、最近の歌手では「愛をこめて花束を」で鮮烈な登場をした越智志帆(Superfry)に近い。どちらも小柄で新人ながら圧倒的な声量と高い完成度を持ち合わせていた。
 MISIAのアルバムは何枚か手にしたことはあるが、特別にフェイバリットなものではなかった。ヴォーカリストとしてはすごいが、声質として切れとか冴えが響きにくいところがあり、ファンにはなりきれなかった。大阪城ホールや横浜アリーナの二夜連続をこなす星空のライヴ全国45ヵ所ツアー。当初、鳥取は入っておらず、最後の調整で追加されたようだ。 MISIAは二日前から鳥取入りし海と山の幸を堪能したという。
 席は前から13番目の「す」列。ステージに近い。3曲目からは総立ち。二十代が中心のコンサートは久しぶりだ。アンジェラ・アキと同年代だが、訴求する層が違う。アンジェラはアーティストで、アスリートだ。日々のトレーニングによって精緻に鍛えられた体躯で、見事に共鳴腔を制御して、遠くまでとおる声で自身の思いを届けてくれる。MISIAはアスリートよりも「格闘家」といったほうが近いのかもしれない。越智志帆がまっとうなボイトレを受けつけず、もって生まれた声帯で衝撃を届けるように、MISIAもまた天性の喉で聴く者を圧倒する。あんな声の出し方したら声帯痛むし、あとが続かないと思うようなフルボリュームで声を荒げ、そのテンションのまま延々と歌い続ける。青を基調としたボへミアンドレスにターバンストール、その下は長めの蛍光のエクステを絡ませる。激しく動き、シャウトしつづけるMISIA。高い音域を崩さず質量感のある声を出し続け、生身の情感のかたまりをそのまんま客にぶつけてくる。もうゾクゾクするざわつきをおさえられない。その波にのまれたら、身をまかせるしかない。
 ソプラノサックスとMISIAの掛け合いが目立ち、ギターもキーボードもドラムもおとなしい。常に歌い続け、間奏でもシャウトするMISIAに楽器のソロは入れない。ベースがしっかりと低音域を響かせ、バンド全体のバランスをとっている。惜しげがないフルボリュームはそれだけで凄味があるが、どの曲でもフルパワーの展開がワンパターンで、CDだけ聴くとその重さが平板な印象を受けるときもある。
 生のMISIAはすごい。ライヴでは、圧倒的な質量のかたまりの波に飲み込まれ、胸がざわつく。「everything」ではCDをはるかに超える迫力ある展開とエンディングでの裏声で繊細な仕上がりを聴かせてくれた。
 もう「包み込むように・・・」の自分ではないという意識があるのか、デビュー曲を歌ってくれなかったMISIA。いまだからこそ、いまのMISIAが歌う「包み込むように・・・」を聴かせてほしい。ともあれ、全身でフルボリュームで、フルテンションのまま鳥取を魅了してくれたMISIA。おつかれさまでした。今日の烏賊も蟹もうまいはずです(^^)

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